2021
04.15

ベトナムジッポー偽物

Vietnam

トップで紹介している2点は実物です。左は工兵中隊の兵士のもの、右は1968年のクリスマスに妻からプレゼントされた兵士イニシャルが手彫りされたものです。

まず偽物について紹介していきます。

ベトナム戦時のオリジナルZippoは入手が難しくなりました。ベトナムに行くと観光地の土産物として今でもジッポーライターを売っています。ベトナム戦争が終わって45年、もちろん本物は売るほどは残っていません。そこでレプリカが作られるようになりました。1990年代前半まではオリジナルが大量にベトナムにあったそうですが、そのころからすでにレプリカが作られ始めたようです。

私はミリタリアディーラーとして1990年代から年に4回くらいのペースでベトナム買い付けをしていてこれまで100個前後の実物のジッポーを扱いました。ですが2010年頃からベトナムでジッポーの実物を探すのはやめました。あまりに効率が悪いためです。その当時で既に200個~300個の中に1つくらい本物(と思われるものも含む)がある程度でした。最近はZippo社以外のもののみ買い付けています。

ベトナムでも富裕層のビンテージコレクターが増え、2017年頃から実物が1つ80~120ドルで取引されているようです。逆にベトナムの友人たちが日本のオークションでジッポーを見つけて送ってくれないか?とLINEしてきますが、「私が日本で100ドル以下の実物を仕入れるのはほぼ不可能だ。」と答えています。

私が最後にベトナムに行ったのはコロナが流行する以前の2019年で、この時もヤンシン市場(ダンシン市場と書きますが、読みはヤンシンに近いです。機械部品や工具もマーケットで昔は軍装品店が多くウォーマーケットと呼べば通じたほどです)を偵察しましたが、ショーウィンドウのものは全てレプリカでした。店主に話せば奥から本物と言われるものを出してくると思います。そこで問題点を指摘すると、「お前はよく知っているな」ということでこれが本当の本物だ、と言われるものを出してきます。それを数回繰り返して本当の当時のものを出してくると思います(笑)。実際このやり取りを2010年頃に何度か経験しました。

◆チープな偽物

2010年に現地でサンプルとして購入したレプリカです。1個20~30ドルでした。絵柄や彫りは人気のSEX柄とスヌーピーです。型を当てて削っていくのですが、どちらも彫りが非常に深く、線が太いです。

裏の渋いメッセージもおなじみのものですが、こちらも彫りが太いですね。線の太さだけでは真贋見極められませんが、レプリカにはこのような太い字のものは多いです。

底のZippo刻印はオリジナルですが、1978・79年のライターです。1975年から10年ほどは、国交断絶でアメリカのものがベトナムに入ってくることはありませんでしたからこれらのライターはその後ベトナムに持ち込まれて、そのあと土産用に彫られたものです。

ただ正真正銘ジッポーライターなので、これらはまだ良心的なレプリカです。

 

さらに安いタイプがこちらです。大体7ドル~10ドルで買えますが、観光客にはもっと高く吹っ掛けているみたいです。

 

部隊のマークや背面の文字は面白いですが、右の第一騎兵のものは不自然に軽いです。

 

笑ってしまったのですが底のZippoロゴはよく見ると手彫りです。下のものは彫った部分の地肌が金色っぽく見えています。また彫によってできる溝部分のギザギザが残っています。上のものはその上からメッキをかけたもので溝部分も同じ色になりギザギザも消えています。

内側のパテント表示まで手で薄く掘られています。人件費が安いのと、刻印と手彫りの差が歴然としているのに細かい差にこだわらない=よくわからない ということでこんなものが作られています。ライターとしての性能は全く問題ないので遊びで使うには良いかと思います。

さらに、最近は底部分にクロームメッキをかけた上から、当時そっくりの打刻を施したもの現れました。底のクロームメッキの厚盛部分がどうしても不自然に盛ったようになるのと、刻印のエッジ部分などを本物と比べると判別できます。オークションなどで底部分の写真がぼけて写されていると私も判別できませんwww

 

◆高度な偽物

私がベトナムで買い付けしていた1990年代に1960~70年代の実物ジッポーをアメリカからベトナムに輸入している人がいました。これに昔の型を使って字を彫ってしまうと実物との判別は困難です。よく古い名前や民間のマークなどの彫りの上から重ねてベトナム関連の文字や柄が深く彫られているものがありますが、これはアメリカから入ってきたのもに既に彫が入っていたためで、苦肉の策でしょう。彫りのエッジがとがっているか使い込まれて丸くなっているか?とか彫られた溝の部分がきれいか経年で黒ずんでいるか?などをチェックするディーラもいますが、ベトナムでは労働者の方の賃金はいまだに驚くほど低く、ライターを古そうに見せることで10ドル稼げるなら何日かかかてこすったり汚したりすることは平気でします。見た感じとか触った感じでの判別は不可能だと思っています。

私は年号と地名が彫ってある場合、その部隊が駐留していた時期と場所が一致するか?などをチェックしています。レプリカを売る業者さんはどうしてもたくさん売りたいので、同じ詩の文句で裏側は別々の部隊や年号を彫ります。今のベトナム人で昔の戦史を把握している人は少ないのでよくここを間違えます。当時ベトナム派兵(ベトナムツアー)は人気が1年(365日)と決まっていて、その間の記念品として兵士がお土産を買ったため自分の駐留していた土地と年が入ったものを好んで購入しました。

ジッポーの底の製造刻印が1970年ですと、どうしても彫りの年号は1970年以降にするため(製造年より後のものに見せかけるため)1stCav.Div. AN KHE 70~71などと彫られていることがありますが、第1騎兵師団は1968年後半にはAN KHEにはいませんでした。

彫の真贋を判断するのは難しいですね、私のプロフィールページにも載せていますが本物を写真でもいいのでたくさん見ておくと、レプリカの違和感に気付くことがあります。下記は私が実際に持っていて精読している本です。この本の写真とEbayで1つ200~300ドルぐらいで大量に出品している出品者のもの(全てレプリカだと思います)を比べてみると目が養われると思います。本は高価に感じますが、偽物を200ドルで買うのに比べれば安いと思っています。

 

 

◆実物についてはこちらで紹介しています

 

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