09.04
TL-29 ポケットナイフ/Signal Corpsナイフ
このカテゴリーのナイフは日本ではナイフショップも扱わず、サープラスショップもあまり扱わない隙間アイテムなので情報も少なく商品もあまり販売されていません。
アメリカではコレクターがいて、なにより自分が子供のころ家にあってキャンプで使った。とかおやじが工具箱に入れていた。など、生活になじんだアイテムです。
まずはTL29です。2次大戦から支給されているものです。
Sigunal Corps(シグナルコーと読みます)ナイフと混同されますがSignal Corpsナイフは1次大戦から30年代に支給されたスリムなハンドルで、ドライバーブレードの両側に丸いエグレがあるもの、あるいは大小のナイフブレードが付いたものです。1917~18年頃の生産です。
これは形状は似ているのですがドライバーブレードではなく、スプーンが付いておりハンドル長11.5cmと若干大きいものです。1次大戦時の珍しいレッドクロスナイフで、赤十字のメンバーに支給されたものだそうです。スプーンを収納できるようにハンドルに切り欠きが入っています。
こちらは古いカミラスの半円形のロゴが入ったものです。S.C.U.S.A.のS.C.はシグナルコーの事です。
ULSTER社製 ドライバーブレードの上下両方にくぼみがあるのがわかります。
MILLER BROS Co.のものです。
ハンドルにTL-29と刻印されたインレー(埋め込み板)が入ったものがありますが、こちらは1920年頃のものでこのあたりからTL-29の名称が与えられたと思われます。
WW2のTL-29はこの後継モデルで、スペックが変更され一回り大きく頑丈な作りになりました。ドライバーブレードのくぼみも片側だけになりました。
Tool Linesmanの略なのでSignal Corpsとほぼ同じで通信部隊用の装備となりますが、のちに支給範囲が広がり一般の部隊にも支給されたそうです。(懐中電灯のTL-122も元は通信士、機関銃手、将校用の装備でした。)
こちらがTL-29。ペンチとセットの通信兵用だと思われていますが、ナイフのみで一般部隊にも支給されました。
TL-29は20社近くのメーカーで作られ、ウッドハンドル、戦後の樹脂ハンドルなど無数のバリエーションがありますが基本はメインのスプリング固定のナイフブレードとサブのライナーロック式のドライバーブレードで、ドライバーブレードにもエッジが付いています。
このサブブレードが曲者で、爪をかける溝が根元寄りにあるため、かなりの力がないと開きません。(私も親指の爪を何度も削りました。)
コツはメインブレードを完全に開いて両側から挟むようにサブブレードを起こすのと、注油をしておくことです。
2次大戦時はウッドハンドルが中心で、その後50年代からベトナムにかけては樹脂ハンドルのものとなったそうです。
またグリップにTL-29の刻印がなくブレードにもARMYやGovermentの表示がないものは支給品ではなく民間マーケットに販売されたものだといわれておりますが例外もあるようで、奥が深いジャンルです。
缶切りや栓抜きはないですがシンプルで使いやすく、私も普段の梱包開封用にボロボロのものを砥ぎ直して使っています。
WW2のUTICAのものです。WW1のころに見られるような骨型のインレーにTL-29の文字が刻印されています。
同じくWW2のUTICA製ですが、別ブランドのKUTMASTERの刻印のものです。UTICAと同じ生産ラインで作られたものと思われます。
WW2のレミントン社製。同じくボーン型のインレーが入ったウッドハンドルです。
同じモデルですが、こちらは良く使われ研ぎ減りしています。ランヤード用のスイベル金具が外れています。WW1のもののように、この金具を外してしまう場合も多いようです。
KA-BAR(Union Cutlery)のものです。こちらはハンドルにTL-29の刻印がありません。
PAL社製。珍しいUS ARMY刻印のものです。
こちらはCASE社製です。XXのマークはブレードの硬度テストを2回行った証明だそうです。
珍しいULSTERのものです。
KINGSTON社製 丸みを帯びたウッドハンドルが特徴です。
CAMILLUS製
コメント
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大変興味深く拝見いたしました。
TL-29ナイフの画像の他、イラスト図の画像を掲げておられていますが、このイラストの原典は何か、お教え願えませんでしょうか?決して画像そのものをお願いするものではありません。何卒よろしくお願い申し上げます。
コメントありがとうございます。M. H. Cole
U.S. MILITARY KNIVES, BAYONETS & MACHETESという本です。今は絶版になっています。