2020
11.18

米軍ドッグタグ(認識番号と打刻スタイル)

Vietnam, WW2 US

米軍兵士が首からチェーンでつけている身分証明の金属製タグを犬の鑑札に似ているのでドッグタグ、と呼びます。
南北戦争以降に考案され、2次大戦前から楕円を伸ばした形のプレートンが2枚の形になって現在も使用されています。2枚セットになったのは戦死したときに片方のタグを回収し、1枚は体につけたままにするためです。

ベテランからの買い付けを行っているとドッグタグがよく入ってきますが、1枚のみのことも多いですし、同じ兵士のものが10枚以上ボックスに入っていることもあります。
はじめは戦死者のものを持ち帰ったのかと思いましたが、現地で買い付けしている友人に聞くと帰還したベテランが、記念にとっておくときチェーンから外して保管するため2枚セットならないことが多いそうです。

外せるように短いチェーンについた方のタグはセカンドタグと呼ばれます。兵士の持ち帰り品とともに、セカンドタグのみで見つかることも多くそれらは戦死者のものではありません。

また、このように当時の軍歴の書類や記念のアイテムの中に1枚だけ入っていたり、アルバムに貼られたりしている物も入ってきます。

2次大戦から朝鮮戦争のタグは片側に切り込み(ノッチ)があります。これは当時ドッグタグの内容を紙に複写するためのAddressographという機械に固定する際、向きを間違えないためのものです。

ベトナム以降はこの機械は使われなくなりタグのノッチもなくなりました。
私がコレクションを始めた頃は「戦士した兵士の腹にガスがたまらないよう口を開けておくため、ノッチを歯にひっかけて固定した。」という恐ろしい伝説を聞かされましたが、さすがにそれは誤りのようです。

2次大戦時のシリアルナンバー

打刻の中身の見方について備忘のため書いていきます。

□2次大戦時の陸軍の認識番号は8桁の数字が基本です。

◆正規兵(志願兵)の場合は初めの一桁が1、二桁目の数字が所属する軍団(Corps)の地域になります。

◆予備役兵(州兵)は初めの二桁が20となり、三桁目の数字が軍団の地域になります。

◆徴兵は初めの一桁が3、二桁目の数字が所属する軍団(Corps)の地域になります。1942年から徴兵の急増の為、初めの一桁が4の徴兵用ナンバーが作られました。

◆それ以外に一桁目にアルファベットが入ったものがあります。 R:正規軍系・下士官、O:正規軍将校、W:ワラントオフィサー、T:航空機搭乗員(下士官)、V:WAAC(女性軍団)将校、AとL:WAACの兵・下士官、N:ナース

この場合O-123456というように7桁のナンバーとなります。

こちらは実際のタグです。大戦初期の1941年~43年6月までのフォーマットで、名前、サービスナンバー、破傷風接種、血液型の後に近親者とその住所、そして州と町、宗教が打たれているためびっしりと文字が入ります。この後徐々に簡素化されていきます。3で始まるナンバーなので徴兵された兵士のものです。

1944年3月~1946年4月のフォーマットで非常に簡素化されています。名前についてはラストネーム、ファーストネーム、ミドルネーム(クリスチャンネーム)のアルファベット1文字 の順となります。1で始まるナンバーで志願兵のものです。

20で始まる予備役(州兵)のタグです。

O-の後に6桁の数字が入った将校用です。42年の破傷風接種、近親者住所入りのものです。デスクかブリーフケースのキーが付いていました。

3で始まる徴兵された兵士のタグです。

2次大戦時に海軍や海兵隊で使われた穴が2個あるスチールプレートのタイプです。メッキがはがれて錆が出ています。USNR(Navy Reserve予備役)の水兵のもので破傷風ワクチン接種が1943年となっています。桁数で分類されています。2次大戦時海軍将校は1~3で始まる6桁以下。7桁のものは下士官/兵だそうです。

これらは海軍の楕円タイプで7桁ナンバーの兵/下士官のものです。

 

戦後

□朝鮮戦争(1949~1953年)からベトナム初期

頭にアルファベット1~2文字の募集コード、その後に8桁の数字となります。

US:徴兵の兵/下士官、O:将校、RA:正規兵(志願)兵/下士官、NG:州兵、ER・BR:予備役兵/下士官

USで始まる徴兵のものです。後に続く5で始まる2桁は徴兵された州によって分かれており55はColorado, Illinois, Iowa, Kansas, Michigan, Minnesota, Missouri, Nebraska, North Dakota, South Dakota, Wisconsin, Wyomingのいずれかとなります。ワクチン接種が1950年、血液型A型のプロテスタントの兵士です。

USの後に51と打たれていますがConnecticut, Delaware, Maine, Massachusetts, New Hampshire, New Jersey, New York, Rhode Island, Vermontのいずれかで徴兵された兵士です。血液B型ローマンカソリックの兵士です。切り欠きのないタグに変わっています。

52で始まる Indiana, Kentucky, Maryland, Ohio, Pennsylvania, Virginia, West Virginiaのいずれかの州で調整された兵士のものです。最終行はEpiscopal=アメリカ聖公会のことです。聖公会はイギリスで創始された古い宗派でそれがアメリカやカナダ、日本などに広まりました。

□ベトナム戦中期1966年~1968年

引き続き上記と同じフォーマットが続きます。頭にアルファベット1~2文字の募集コード、その後に8桁の数字です。

US:徴兵の兵/下士官、UR:徴兵将校、ER:正規兵(志願)兵/下士官、OF:正規兵(志願)将校 、AF:空軍兵/下士官、AO:空軍徴兵将校、A:空軍正規兵(志願)将校、AA:空軍女性兵/下士官

AAで始まる女性のものです。

1969年以降はこのように順次9桁の社会保障ナンバーに切り替わります。

 

 

□こちらはベトナム戦時の海軍のタグです。1959~1971年まではこのような6桁(後半は7桁)の認識番号でした。1桁目が数字のものは将校のナンバーです。

 

こちらのように1桁目にBが入っているものは兵/下士官のナンバーです。

海軍と海兵隊は1972年以降9桁の社会保障番号に切り替わっていきます。

□ベトナム戦時の海兵隊のタグです。1972年以降の9桁の社会保障番号(SSN)のものです。血液型はO型、宗教はバプティストとなります。海兵隊のみに見られる表記ですが、USMCの後の「M」はガスマスクのサイズを表しています。

 

チェーンのみ袋入りで支給されていました。左は1957年、右は1960年のものです。

ドッグタグにつけるお守りの4つ葉のクローバーです。

ベトナム戦時に使われた、ドッグタグ用のカバーです。チェーンもカバーされたものがついています。PXで売られていたもので1.95ドルの値札が付いています。台紙にUSMCシリアルナンバーが記載されていますが、海兵隊用というわけではなく全軍で使用されていました。

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